A社マーケ部「電通さん今日これ終わるまで帰りませんよね?」
半年ほど前、とある会社のマーケ部と仕事をしていたときのことの話。
その会社は社名を聞けば誰もが頷く大企業。仮にA社としておく。
主力商品のよく売れるいわゆる商戦時期のこと。部長クラスの人が電話口で話している声が聞こえてきた。
「電通さん今日これ終わるまで帰りませんよね?」
電通はWebマーケの委託先
その商品は主にWebサイト経由での販売が強く、サイトの企画・運営は電通に委託されていた。
A社は企画レビューとプロジェクト管理のみを行う形の、いわゆる丸投げ型である。
A社にとっては重要チャネルのため、販促スケジュールが出次第、電通に連絡を取ってすぐ動いてもらう……ということをしているようだった。
商戦時期に飛んだ怒号
ぼくがA社と仕事をしていたのはちょうど主力商品の商戦時期だった。
マーケ部全体がピリピリした雰囲気に包まれていた。
何か起きたらすぐに部長クラスが飛んでくるような緊張感である。
そんな中、部長クラスの人が電話口で委託先の電通さんにキレていた。
「電通さん今日これ終わるまで帰りませんよね?」
新商品の紹介ページの納入遅延
よく話を聞いてみると(というより勝手に聞こえてきたのだが)、新商品の紹介ページ制作が遅れているようだった。
商戦時期のど真ん中に間に合わなければ、売上への影響は免れない。
そのため部長クラスが委託先の電通に釘を差しにいったのだ。
新商品の発表は翌日の昼だった。
電通は結局徹夜していた
結局、翌日には新商品用のページがサイトに掲載されていた。
おそらく電通の担当メンバーは徹夜の勢いで仕上げたのだろう。
件の部長クラスの人は「助かった」という様子だったが、きっと電通側はてんやわんやだっただろう。
悪いのはA社か電通か
おりしも電通の自殺事件があって間もないころだったこともあり、電通側としてはあまり徹夜のようなことはできないという雰囲気だったに違いない。
しかし客の言うことは絶対という体育会系な風土はおそらく当時は変わっておらず、オフィスからは出るが家に仕事を持ち帰ってでも終わらせたのだろう。
もちろん前日になって進捗遅延を報告してきていた電通にも非はあるが、「今日帰れませんよね」と言い切るA社側も正直どうかと感じた。
発注側が変わらなければ、受注側が変わることはできないのだ。
まとめ
昨今のニュースで電通は真剣に働き方改革に取り組んでいると見聞きしている。
が、仕事の忙しさは自社だけでコントロールすることは難しい。
そこに受注者と発注者がという力関係がある以上、両者を巻き込まなければならない。
発注者が「今日は帰れませんよね」といっている限り、長時間労働は続くのだ。
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